wojow’s

好きです、映画

映画『her/世界でひとつの彼女』

映画を観ました。

her/世界でひとつの彼女』です。

ねたばれもあると思いますので、

もし奇遇にここを見つけて立ち寄られた方、

ご注意くださいませ。

 

 

***

ストーリーの設定は近未来といったところだろうか。

 

建物や主人公の職場、その周辺とも近未来過ぎない様子がまたいい。

これはおそらく出演する人々の衣装を一昔前(60~70年代?)に設定していることも

非常に効果をもたらしていると考えられる。

衣装と建物のギャップが、この映画に何とも言えないギャップをもたらし、

奇抜すぎない近未来の世界を上手く表現している。

 

少数の出演者ながら、その限られた役者達の秀逸な演技が光る作品。

手紙代筆者の主人公セオドア:ホアキン・フェニックス

サマンサ:スカーレット・ヨハンソン

エイミー:エイミー・アダムス

ポール:クリス・プラット

 

 

 

この映画の特徴的な撮影方法として言えるのは、

主人公目線の映像を多く取り入れていることではないだろうか。

 

人と話す際には

我々は自分でも気づかない場面を目にしている。

そんな些細な事実に気づかせてくれるようなシーンが織り込まれているのだ。

 

マンホールからわき上がる湯気

ベッドに舞い上がる小さな繊維

 

とりわけ避けたい会話の最中、

人は無意識にどこかを注視しているのだろう。

 

 

この映画で主人公セオドアが体験するできごと

すなわち人工知能型OSとの恋愛経験は、

多くの人にとってなんと想像しがたいのだろう。

実際に経験した人でないと分かち合えない心情だろう。

しかしこの映画は、鑑賞者も十分に理解できるほど、

詳細にセオドアの心情描写を行っている。

あたかも自身もOSとの恋愛を経験したかのような錯覚を与えてくれる。

つまりOSとの恋愛という希有な経験から

鑑賞者を決して突き放したりはしないのだ。

 

 

セオドアとOS(この映画ではサマンサ)とのシーンは

そのほとんどが朝から昼にかけてが多かったように記憶している。

夜のシーンがあったとしても、セオドアが寝入るときくらいだった。

 

しかしこの映画の最後のシーン

セオドアが恋に落ちたOS(サマンサ)が去ってしまったあと

セオドアは夜の空間に少したたずむ。

そして彼女(her)のいない朝を迎えるのだ。

 

 

ことばや台詞では表し尽くせない感情を

主人公の視点からの映像情報で鑑賞者に伝える。

そんな手法だからこそ

静けさの中に波打つ感情がじんわり伝わってきた。

 

エンドロールが短い。

後少しこの映画の空気に浸っていたい気がした。